あそびとくらす

遊びと暮らす 遊人クラス 日常の中にちょっとした遊び&スパイスを。日常の中からちょっとした学びを。

踊りまくる…ガーナの葬式 2008

チラ見した

NHKラジオで11月2日にガーナからの放送があるらしい。

www.nhk.jp

そう、ガーナの葬式は、踊る🕺。歌う。

思い出した。

 

思い出は、話していないと記憶が色褪せる。

私の育った家族は、慣れたもので

私の思い出話を面白おかしく聞いてくれるので、話しがいがあるのだが

私の今の家族(夫、息子)は、

"ご飯中に会話"は息子と話すくらいで

"出会ったこと""思い出し笑い話"なんて話してもスルーされるので

(なぜ伴侶に選んだ?!………ご縁です〜〜)

ここ(ブログ)で、久しぶりに記憶の上書きをしておこう。

 

あれは、2008年(たぶん、以前にそう書いている)

ガーナに先生(レゴン大学の助教)を訪ねに行き、2週間ほど滞在した時だ。

ローカルを味わいたいという私たち(日本人女子2人)に、

先生は「じゃ、僕の田舎に一足先に行くといいよ。葬式がある。」

・・・・・・・・

葬式??

葬式とは、亡くなった方々を弔うもので、

観光客が観に(冷やかし)に行くものではないのでは…

 

私たち:えっと、私たち観光客だし、そんな大切な場所にいきなり行ってはまずいのでは?

先生:そんなことはない。歓迎されるよ。

葬式で歓迎?!

んな、馬鹿な…

私たち:イヤイヤ、故人も知らないのに、、、失礼だと思うから

先生:今回はみんな寿命を全うした死だから。

ガーナの葬式なんて見たことないだろ?きっと日本とは違う。

文化の違いを、本当のガーナを知る機会になるよ。

 

私たち:(確かに…いきなりやってきて葬式見たいなんて言ったら非難轟轟やんな。

葬式に参列できるって滅多にないよね。)

本当のガーナ……

行きます!

 

行きの道中の身の危険と目から鱗の出来事はこちら→

 

その数十時間後

イエローなはずの私たちはホワイトと呼ばれ、

なぜか全く知らないガーナ人5人の葬儀を執り行っている教会の

壇上に

ホワイトの神父さん家族と、村長と、大学助教授(村の図書館を作っている)たちと

席を並べて座っていた。

おかしいだろ!?

村長でも、村のために働いてるわけでも、

神父でも、

なんならキリスト教徒でもないんだけど?!

こんな壇上に座る気なんてさらさらなかった。

ここが壇上になることさえ、気が付いてなかったのだ。

 

壇上の端っこの方で肩身狭そうに座っていると

下段の端の窓の外に何やら動くものが。

教会に入れなかったらしい子どもたちが

異国の見目麗しい、イエローの私たちを見ようと

窓の隙間から、順番に折り重なっては、こちらを覗いている。

友達が手を振ると、わぁ〜!きゃ〜!と、喜んで手を振りかえしてきた。

葬式の最中だぞ?と思いながらも、可愛らしく

私も車から手を振る皇族が如く、こっそり手を振ってみたら大ウケだった。

(こんなに手を振るだけでウケたのは人生、最初で最後だった)

 

さて、式が進むと、

最後の家族とのお別れの時間になってきた。

ステージ下の前方にある棺桶に、皆が一人一人お別れの挨拶を…

するのかと思ったら、

手拍子と共に歌が始まった。

歌?

そう、ソウルフルな歌が。

 

手拍子をし、足をダンダン鳴らし、全身を使って歌いながら

棺桶の周りを回る…

むむぅ、動画がなくてわかりづらいが、

1人半径2メートル確保されたライブハウスで

イタコがソウルフルなゴスペルに合わせて、

全身全霊で歌い踊っているところを想像してみてほしい。

(できるか!!)

全身で感情を表現するってこれなんだ…

と呆気に取られた。

明るく歌いながら踊っている人もいれば…

1人、2番目の棺桶の周りを回っている女性は

号泣してるのか、歌と踊りに熱中しているのか分からなかった。

ひときわ大きな声で歌っているかと思えば、

突然棺桶にしがみついて泣き出し、また歌い踊り。

リズムにのって歌って踊っている時は笑顔なのだ。

一体、どっちなんだ?

笑ってるのか?泣いているのか?

あまりに激しすぎて、呆然と見入ってしまった。

…………

忙しい人だな…いや待て…

もしかしたら自分の中の悲しさを追い払おうとしているのかもしれない…。

そう感じると………

感じてみたが………

最後には、もう、5家族?

いや、教会内の村人たち全員が立ち上がり、

歌って踊って、踊りまくっていて

(半径2メートルないが、それくらいある気分でライブハウスで

歌い踊りまくっている人たちをご想像ください)

なんだかダンダンとお祭りみたいになっていた。

これが、本当のガーナ、なのか…。

お祭りのような葬式にも驚いたが

そこにある棺桶の種類の豊富さにも驚いた。

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はっきり覚えていないが、

棺桶が、あの知っている棺桶じゃないのだ…。

故人の好きだったものになぞらえてあるそうで、

確か、楽器とか、車とか、オーダーメイドの棺桶だった。

 

さて

教会の壇上にいるものの、キリスト教の礼拝も知らないし、

ましてやガーナの葬式のしきたりも知らない。

この大迫力の歌とダンスはいつ終わるんだろう…

君たちも下に降りていいよ…みたいに言われたけど、

神父さんたち家族は降りないし

私が降りたとて、このダンスに混ざれる気もしない…

モゾモゾと着席していたら

なんだかんだで、神父さんのお話の後、退席を促され

教会での葬式は終わった。

 

あの経験は一体なんだったんだろう。。。

故人の家族には、私たちはけったいなイエローだったろうし

私たちには、誰が亡くなったかも分からないのに

神父とともに壇上に上がってしまったという経験が残った。

 

それだけではない。

その後の食事会で私は、親切な方々の手厚いもてなしを受け

数時間後に、お腹が恐ろしいことになったのだけど。

その小ネタはまた後日。

 

少しだけ巻き戻そう。

教会の中に入る前だ。

確か、午前中だった。

「そろそろパレードが来るよ」と声がした。

ン?聞きまつがい?

葬式が始まるよ パレードが来るよ …?

 

聞き直そうとしたら、本当にパレードが

来た〜!!!!

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こ、鼓笛隊だった。

明るい曲を鳴らしながら近づいてくる!!

紅白の縁起物っぽい布に彩られた棺桶を押しながら

行進で向かってくる。

祭りが始まるかの如く、明るい…

そこで運ばれているのがよもや棺桶だとは、

死人が安置されている箱だとは

初めてみた人には思いもよらないだろう。

「事故や病気で早くにこの世をたたなくちゃいけないと、

残された家族も悲しいけれど、寿命を全うして、天国へ召されることは幸せなこと。

今回は5人とも、60(違ったかも)過ぎてるから、お祝いなんだ。」

なるほど、そうか、

悲しい葬式ではなくて、寿命を全うできたお祝いなのね。

ど〜りで、明るい。

そりゃ、数時間前から

みんながカラフルでおしゃれな衣装を着飾り、

あちらこちらで明るい話し声が聞こえてくるはずよね。

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(洋服がどれもおしゃれ)

 

そう感心していたら、

突然2個目の棺桶の横にいた女性が

ガバッと棺桶にしがみついて泣き出した。(歩きながら)

ウオ〜ぃうお〜い、人目も憚らず泣いている。

かと思えば、手拍子、足拍子で突然歌を歌い出していた。

その後の先述の教会である。

 

確かに

『ガーナで、神父と同じ壇上にて知らない人の葬式に参加する。』

経験は、滅多にできないことだったと思う。

それと同時に、

ガーナでの生死観のようなものにも少しだけ触れることができたのだろうか。

祭りのような葬式に参加し、

棺桶を運ぶ時には人目も憚らず号泣していた娘さんが

最後にはリズムにのって歌とダンスで(おそらく)笑顔で

故人を送り出すまでに流したあの大量の涙は、

心の整理をするのに必要な涙で

あれだけ激しくたくさんの涙を流し、歌い踊ったからこそ

葬式の最後には、もう泣く必要は無くなっていたのかもしれない。

 

本物のガーナ。

 

たったの2週間では、どれだけの本物に会えたか分からないが

短い私の人生の中でも(当時30、今40代)

忘れられない旅となった。

 

ガーナに住む人から見た

"歌って踊る葬式"の話を聞きながら

あの時、ただ、何も知らずに経験した

本物のガーナの一鱗に触れてみたい。

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歌って踊る! ガーナのお葬式 - ちきゅうラジオ - NHK